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夢話(1)小虎 [まさかそんなこと?]

 電気を消した家の中に、子猫が入り込んできた。無類の猫好きである私は、
「やぁーどっから入り込んだの。おいでおいで」
と、逃げようとする子猫をむんずと捕まえて、頬をやわらかい猫毛にこすりつけた。猫と戯れるのは久々だった私はうきうきして、猫の気持ちなどお構いなしに、今度は鼻を合わせるように顔を覗き込んだ。
「どっからきたの、お前」
 しかし、その子はにゃあとも鳴かず、きょとんとした顔で私を見ている。ちっとも暴れない、実におとなしい子なのである。これは飼いたい。ペット禁止の集合住宅の中で、めらめらと欲望が沸く。
 それに、ちょっと変わった子なのもよかった。キジトラでも、三毛でもない。額に数本の横線、頬の横にも入っている。耳も丸くて、小さな目はグリーン。
「虎じゃない?」
 誰に言っているのやら、たぶん家人だろうけど、私はねぇねぇと勢い込んで言った。
「この子虎だよ」
 しかもこの模様のしっかりさ加減から見ても、この子は子供じゃない。つまり子猫ほどの大きさの成獣なのである。
 こ、これは可愛い。
 ずきゅーんと胸を打ち抜かれ、しびれて動けない私に、家人が言った。
「ここから出たんじゃない?」
 見れば、部屋の隅にあるカラーボックスの脇に立っている。上に置かれた、インテリアの小さな檻はからっぽだった。
 その隣に置いてある作り物の桜の枝が一枝が折れて、小さな花が床に落ちている。それを拾いながら、
「この花を取りに出てきたんだねぇ」
なんて、家人が言う。


こんばんは、皆さん。春だ、春だと浮かれていたら、急に寒さが戻ってきましたね。もう吹いてしまった春一番の立場を考えると、胸がちょっぴり痛みます。この寒さが原因なのか、それとも夜中に見た「水曜どうでしょう ジャングルリベンジ」で、豹だ虎だと笑い転げていたせいでしょうか。こんな夢を見ました。
どっかで読んだ小説のような気もします。でもなんだったかは忘れましたので、オッケーなのであります。
今回登場の家人は実に風流じゃあないですか。いや、天晴れ、天晴れ。
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コメント 4

歌鳥

 いやーこれはアレですよ。そのまんま「家守奇譚」にありそうなお話じゃないですか。いいなー猫。いいなー虎。いいなー家人。いやまあ、家人はちょっと欲しくないですが。
 最近ゲームのシナリオに「シカでした」という文章を仕込んだ歌鳥でした。ゲーム自体はろくでもないもんでしたが(なのでタイトルは書けません)、あのへんだけは自信ありです。あ、来週から東京でもジャングルリベンジだわ。
by 歌鳥 (2009-02-28 19:10) 

小前

おぉう、さすがに家人はあげられないなぁ(笑)
わたしもこれは、家守奇譚っぽくないか? とも思ったりしたんですが、良くよく「虎」を考えてみましたら、どうも大好きな「山月記」あたりにあるんじゃないか、なんて思ったりもしています。モロ影響を受けます。あなた色に染めて。
おー、ところで、「シカでした」をゲームに仕込むなんて、やりますなぁ。見たい気もしますが、婦女子が見ちゃいけないゲームなのかなぁ、なんて思ったりもしています。

by 小前 (2009-03-03 12:17) 

歌鳥

ブログペットにメッセージ送ったんですが、読んでもらえたでしょうか。って私もそんな機能があるのをすっかり忘れてましたが。なんですてー。
by 歌鳥 (2009-03-07 18:52) 

小前

ごめんなさーい。今日気づきました(;_;) まじまずい!とそっこー拝見いたしました。謝罪会見開きます? もちろん、弁護士はやといません。なんですてー。
by 小前 (2009-03-11 21:41) 

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